引っ込み思案な私

 

「あー?永瀬どういう意味よ?」

 

「可憐で可愛い我が社のアイドルの受付嬢が、こんなガサツな女に憧れてるなんて、俺かなりショックなんだけど!
間違ってもこんな女になっちゃダメだよ、詩織ちゃん!!」

 

「ガサツで悪かったね!!
ってか、誰もあんたの事なんて誘ってないのに、なんで当然のようにここにいるのよ!」

 

 

目の前にあるソーセージの盛り合わせに乱暴にフォークを突き立てながら、亜紀さんは永瀬さんを睨んだ。

 

 

「ひでー!
社内で1番イケメンだって女子社員の憧れの的の俺に、そんな暴言吐くのお前くらいだぞ」

 

 

確かに。

 

カッコよくて、明るくて、話しやすくて。
社内でもすごく人気のある永瀬さんに、こんな風に憎まれ口を叩ける女の子は、亜紀さんくらいかもしれない。

 

「はっ!嘘つけ。
社内で1番人気なのは、永瀬じゃなくて石井じゃん」

 

ふん、と鼻をならしてそう言った亜紀さんに、永瀬さんは思いきりショックな顔をした。

 

 

「うわー!俺が気にしてることを!!
なんでこんなフレンドリーな俺より、あんな愛想のない石井が人気なんだよ。
納得できない!
ねぇ、詩織ちゃん。詩織ちゃんは俺と石井ならどっちがいい男だと思う?」

 

 

仲良く言い争う二人をぼんやりと眺めていたら
突然私に話の矛先が向いて驚いて顔を上げた。

 

 

「え!?」

 

「あ、私も気になるかも。
詩織の好みの男のタイプって聞いたことなかったよね」

 

「石井さんって、企画部のですよね……?」

 

 

そう言って、記憶の中から石井さんの顔を思い浮かべる。
永瀬さんと石井さんは、確かに二人とも女子社員の注目を集めるイケメンだとは思うけど……。

 

 

気さくで明るくていつも笑顔のイメージの永瀬さんと、
それとは正反対の、整って綺麗な顔をしているんだけど、表情の冷たい近寄りがたい雰囲気の石井さん。

 

そんな近寄り難さがいいって女の子もたくさんいるんだけど。

 

 

「私は石井さんって、ちゃんと話した事ないからわかんないです」

 

「あれ!?
詩織って石井と面識ないんだっけ?」

 

 

私が首を振ると、亜紀さんが驚いたように目を丸くした。

 

 

「一応石井さんとは同期入社ですけど。
入社試験と入社式の時一緒になったくらいで、ちゃんと話したことないですよ」

 

 

受付の仕事をしてる私と企画開発部の石井さんとじゃ普段話す接点もないし。

 

こうやって違う部署の亜紀さんや永瀬さんと仲良くしてもらってるのだって、フレンドリーなふたりが頻繁に私に話しかけてくれるからで。
そうじゃなかったら引っ込み思案な私が二人と知り合いになるきっかけなんてなかったと思う。