半分仕事で半分遊び

 

「それじゃあ、詩織ちゃんは石井より俺派ってことだよね?
うれしいなぁ」

 

やったね!と、嬉しそうに言いながら、永瀬さんが私の髪をなでた。

 

別に永瀬さん派ってわけでもないんだけど。
わざわざ否定するのも失礼かなと思って、小さく首を傾げた。

 

 

「ちょっと、永瀬!
馴れ馴れしく詩織にさわるな」

 

「あれ?
なに亜紀、ヤキモチ?」

 

「何言ってんの。
私があんた相手にヤキモチなんてやくわけないじゃん」

 

「かわいくねー」

 

 

なんて賑やかに言い合う二人。

 

 

本当に仲がいいなぁ。
気を使わず何でも言い合える二人の関係がうらやましい。

 

「あ、悪い。電話だ」

 

どこからかバイブの音が聞こえてきたかと思うと、永瀬さんがスーツの内ポケットからケータイ電話を取り出した。

 

「はい、永瀬です」

 

今まで亜紀さんと笑顔で言い合っていた時とは違う、余所行きの声でそう言って、ケータイを耳に当てながら私たちに目配せをして席を立つ。

 

 

「仕事の電話ですかね」

 

もう9時になるのに。こんな時間までお仕事の電話がかかってきたりするんだ。
営業さんって大変だなぁ。

 

 

「半分仕事、半分遊びって所じゃない?」

 

亜紀さんは、永瀬さんの後姿を眺めながら苦笑いした。

 

半分仕事で半分遊び?
どういう事だろう。

 

「悪い、取引先の岩本部長からお誘いきちゃった」

 

しばらくして戻ってきた永瀬さんが、ケータイを胸ポケットにしまいながら頭を下げる。

 

「え?これからまたお仕事に行くんですか?」

 

永瀬さん、お酒飲んでるのに大丈夫なのかな。

 

心配して永瀬さんの顔を見上げると、永瀬さんはテーブルの上に置いた私の手を握りながら笑った。

 

 

「ごめんねー、もっとゆっくり詩織ちゃんと話したかったのに。
今度また飲もうね。次は邪魔ものなしのふたりっきりで」

 

「なに詩織の手を握ってんのよ!
さっさと行け!おねーちゃんが待ってるぞ」

 

 

そんな永瀬さんに、亜紀さんは割り箸の入っていた紙袋を丸めて投げつける。
永瀬さんは笑ってそれをかわしながら、財布からお札を一枚出して亜紀さんに手渡した。

 

 

「これで払っといて。
お前、あんまり酔っぱらうなよ。ちゃんと詩織ちゃん送って行けよ」